乙女ゲームに婚約破棄は付きものだというならば

著者:白井夢子

ルシールは、ここが乙女ゲームの世界だという事を知っている。
ここは前世の友達が話していた世界そのもので、全ての状況が、前世に聞いた条件に当てはまっていた。

この世界が乙女ゲームの世界だという事に確信は持てるが、ルシール自身は乙女ゲーム未経験者だ。それは前世もルシールが貧乏だったからである。

前世の友達は、いつも携帯を眺めながら言っていた。
「ついつい課金しちゃうんだよね〜」
友達が口ぐせのようにそう話すので、「課金」という危険なワードに近づきたくなかったルシールは、乙女ゲームの世界に手を出した事がなかったのだ。

だけど友達は確かに話していた。
「乙女ゲームに婚約破棄は付きものよね。ヒーローとヒロインが、悪役令嬢に婚約破棄を告げるのは定番中の定番よ」

――今、ルシールに婚約破棄を告げるハロルドの隣には、彼の愛するシンディがいる。
この構図はまさに乙女ゲームそのものだ。
ルシールがこの乙女ゲームの悪役令嬢なのだ。

乙女ゲームに詳しくない者達が迷走する世界。
そんな世界のゆるいお話です。

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