愛を織る

著者:彩戸ゆめ

ナランツェが親指ほどの大きさの自分の蜘蛛を見つけて村に戻ると、そこは業火に包まれていた。
燃え盛る炎がまるで滝を上る蛇のようにうねり、空へとむかう。
「村が……」
ごうごうと音を立てて炎が村の全てを包みこむ。

滅ぼされた村の生き残りはナランツェと姉の二人だけで、さらに天上の布を織れるのは銀の髪を持つナランツェだけ。
でも契約の蜘蛛は小さいままで、銀の糸を吐き出さない。
村を滅ぼして天上の布を独占しようとした悪妃に見つからず、このまま平和に暮らしていくのかと思っていたが、姉が嫁いだ商会が天上の布を扱えない事によって傾いていく。
悩むナランツェは取引先の青年クリスに相談し――。
「一番いいのは、君が僕のお嫁さんになる事なんだけど」

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