〝聖女〟————かつてそう呼ばれた女傑がいた。
しかし、彼女は〝聖女〟として貴族諸侯に散々に利用された挙句、非業の死を遂げてしまう。そんな彼女はひょんな事から転生し、クラリス・フローレスとして生を受けた。
二度目の人生は平凡に生きよう。
散々に利用され、非業の死を遂げた彼女だからこそ、その考えを念頭に生きていこうと試みる。だが、十七歳を迎えたある日、突如として発生した〝スタンピード〟によって、その日常は崩壊してしまう事になる————と思われたが、意外な事にそうはならなかった。
「————貴女に、あの時の恩を返したい」
理由は、一人の王子がクラリスの下に駆け付けた為。彼の正体は、シュルト・フォン・アドラー。彼は隣国の王子であり、かつてクラリスが唯一、〝聖女〟と呼ばれていた頃の力を用いて己の信念を曲げてまで、背に腹は変えられないと助けた人物であった。
これは義理堅いお人好しの王子と、かつて〝聖女〟として生きた公爵令嬢の物語。
レビュー