犬と勇者は飾らない

レビュー(1件)

今年の3月25日にイラスト:ヤスダスズヒトさんでオーバーラップ様より書籍化が決定いたしました
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レビュー

  1. Mr.h より:

    中学一年の佐藤草介は幼なじみ・識神こづみの誕生日パーティに参加した日に彼女に告白するも振られてしまい、自暴自棄となっていたところ、気が付いたら全裸で異世界ディー・グリーフィアに迷い込んでいた。

    どうやら勇者として召喚されていた草介は失恋で自暴自棄になっていたこともあり、勇者になって欲しいという支離滅裂な依頼を承諾してしまう。だが佐藤は四年の月日であれよあれよとドラゴンや魔王を倒し、ディー・グリーフィアで英雄としての名声をほしいままにしていた。

    今さら元の世界に戻ったところでまともに生きることなどできないと思っていた刹那、今度は元の世界に戻されてしまい、両親は亡くなっていたが、富裕層である父方の祖父母に引き取られるも、現代日本において中学中退の十八歳は何の価値も無かった。

    そんな中、バイト先のスーパーからの帰り道、佐藤は手負いの銀髪の青年・高槻浩司が黒い虎のような化け物に襲われているところを助け、化け物を完膚なきまでに叩きのめす。
    翌日、御礼がてらに佐藤の自宅にやって来た高槻は自分は陰陽師の家系であり、弟子入りを懇願するとともに、この街にまだ数頭いる妖魔を倒すのを手伝って欲しいと頭を下げる。
    笹峰らに危害がおよぶことを考えた佐藤はしばし高槻に協力することにするのだが、そこにいたのは識神こづみを含む学生たちによる妖魔の討伐隊だった――が序盤のあらすじ。

    この話はジャンルとして確立しつつある異世界からの帰還と『俺TSUEE』を掛け合わせた話であり、
    果たして妖魔の存在は異世界ディー・グリーフィアと関係あるのか、それとも『第三者』なのかという謎を引っ張りながらでうまく邪気眼系中二病全開なバトルシーンに持ち込んでいるのが分かる。

    また、能力が高いとはいえ死地へ向かうような戦いを強いる『協会』の意図とは何か、
    また、非常識にも見える戦い方をするキャベツ太郎こと佐藤の、協力を求めない指導教諭土村叶の考えとは。
    そしてドジっ娘バイトと思われた笹峰ミコそして満身創痍の状態で現れた『錆色の騎士』は一体何者なのか――という謎を途中途中で投入することにより読者の離脱を防いでいるのが分かる。