週末は長年片想いしている幼馴染の誕生日。それまでには何とか恋人同士になって、誕生日は彼氏としてお祝いしたい。でも俺が告白しようとするたび、何故か幼馴染は話題を逸らす。あれ?ひょっとして俺、嫌われてる?

著者:間咲正樹

「でね、昨日観た『馬シャーク』っていう映画が、超傑作だったの! だって上半身が鮫で、下半身が馬の化け物なんだよ!? そんなの最強に決まってるじゃん!」
「何だその小2男子が考えたみたいな設定は」

 とある放課後。
 俺は今日も幼馴染の乃愛(のあ)と二人で、家路を歩いていた。
 乃愛はB級映画が大好きで、自分が観た映画をこうやってよく俺に話してくる。
 その様がまるで気ままに甘えてくる猫のようで、何とも微笑ましい。

「絶対面白いからさ、今度岳(がく)も一緒に観ようよ!」
「ああ、いいよ。――ところで乃愛、今週の土曜日は、お前の誕生日だよな?」
「――!」

 俺は心の中だけで一つ深呼吸してから、切り出した。

「あ、ああ~、そういえばそうだっけ? アハハ、すっかり忘れてたな」

 乃愛はポニーテールの髪をプラプラと揺らしながら、頭を掻く。
 まったく、こいつは。
 ――まあいい。

「――乃愛、お前に大事な話があるんだ」
「……!」

 俺は真剣な顔で、乃愛に向き合う。
 ――俺は子どもの頃からずっと、乃愛のことが好きだった。
 しかしなかなか勇気が持てず、告白できないままこの歳まで来てしまった。
 ――だが、今年の乃愛の16歳の誕生日だけは、どうしても彼氏としてお祝いしたい!
 そのためには、今この時、告白するしかない――!
 さあ、今こそ一生分の勇気を振り絞る時だ、俺ッ!

「――乃愛、実は俺は、前からお前のことが――」
「ちょっ!? ストップ!!」
「……え?」

 の、乃愛?

「あっ、そういえば私、用事あるんだった! 悪いけど先帰るね! またね、岳!」
「えっ!? お、おい、乃愛!?」

 乃愛は目にも止まらぬ速さで、ピューッと走り去ってしまったのであった。
 ……えぇ。

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