【連載】公爵家の長女でした

レビュー(1件)
著者:鈴音さや

次期公爵である優秀な兄と、母によく似た美しい妹。その間に挟まれた「公爵家の長女」たる私は「王太子の婚約者」でもあった。今日、婚約解消を申し出られるまでは。

いずれ王妃になるのだからと努力を重ねてきたのに、婚約者の王子の隣には噂の男爵令嬢。
「あなたはよく努力しているわ。でも、それだけなのよ」。王妃に追い打ちをかけられ、失意のうちに帰宅をした私に告げられた父の決定は、それまでの私の全てを否定するものだった。自室で泣き伏せた私が見た夢は全く別の世界のもので。「私の、前世?」
全てと決別して新しい自分を生きることにした「公爵家の長女」だった私の物語。

*1~14,16~20話が短編版と同じです。(15話ゲームは短編の構成上カットされています)
*21話からが連載版です。
*アルファポリス様でも掲載しています。

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レビュー

  1. Mr.h より:

    ディケンズ公爵家令嬢ローザリンデ・ディケンズは長兄の『スペア』として育てられたが、中途半端な『劣化コピー』であり、女性としても淑女として育てられた妹・フロレンツィアよりも中途半端だったため家族の寵愛を受けることができず、さらには王太子レオニスから男爵令嬢エミリーとの婚約を理由に婚約破棄を言い渡される。
    一方、舞台は大きく変わり、現代日本で妹のほうが何もかも優遇され、母親に翻弄されてきたアラサー女性の姿が描かれる――が序盤のストーリーで、序盤だけを読むと、婚約破棄のあと、ローザリンテは一体何がやりたいのか、突如として現代日本に舞台が移ったことでストーリーが見えてこないが、読み進めていくとアラサー女性の精神や記憶がローザリンデに憑依した『異世界転移もの』であることがわかるようになっている。
    また、婚約していた公爵令嬢から爵位が下位である男爵令嬢に乗り換えた王太子がなぜ誹りを受けないのかという、貴族令嬢ものを読んできた人であれば当然抱くであろう疑問も、読み進めていくとその答えが分かるようになっている。
    妹が優遇され、親、特に母親に冷遇された主人公が親と家族を捨て跡形も無く消えるという両者の共通点――特に表向き行方知れずとなった娘を心配しておきながら、その実自分のことしか考えていない残された者たちの姿を『本人』消失後に織り込ませることが本作最大の肝であり、ある種における『追放ざまぁ』とも言える。そして作者が意図しているかどうかは分からないが、毒親やブラック職場といった自身に害をなす強力な関係性を絶つのに唯一必要なのはカネであるという教訓が含まれている。