精霊に「お前は俺たちの主人に相応しくない、契約破棄してくれ!」と言われたので、欲しがっている妹に譲ることにしました

レビュー(1件)

「魔力のないお前は俺たちの主人に相応しくない、契約破棄してくれ!」
 契約していた精霊にそう告げられ、ミスティア・レッドフィールド男爵令嬢は呆然とした。
「精霊様方もこう仰っておりますし、崇高なるお力をベストな状態で奮って頂かねば。お姉様、どうか契約主の御立場を私に譲ってくださいませ!」
 精霊たちを自らの傍に侍らせながら、アリーシャ・レッドフィールド男爵令嬢が言った。
 上位精霊に見劣りしない可愛らしい容姿に、愛嬌のある性格――そして潤沢な魔力量。なにもかもがミスティアとは正反対である。しかしつたないながらも、ミスティアは精霊達のために身をなげうって努力してきた。だが全ては無駄だったらしい。
(――なら、差し上げるわ)
 ミスティアは妹であるアリーシャに精霊達を譲ることを決意する。失意のミスティアだったが、そんな彼女にある救いの手が差し伸べられるのだった――。
※書き溜めておりますので、しばらく毎日更新予定です。

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レビュー

  1. Mr.h より:

    男爵令嬢ミスティア・レッドフィールドは突如として契約していた眷属たる三体の上位精霊たちからいわれのない不義理を理由に契約破棄を求められ、妹であるアリーシャに奪われてしまう。
    領地の守護者である精霊を奪われ、精霊使いではなくなったミスティアは叔父叔母であり養父母によって、初老で結婚した若妻が次々に謎の死を遂げるミクシリアン・ホード辺境伯との縁談を纏めてしまう。

    このままでは自分が望まぬ結婚どころか死ぬことになると絶望していたミスティアだったが、魔力不足で召喚しきれず、眠りについていた四体目の光の精霊・スキアと邂逅し、『婚約者』になることを条件にスキアと契約を結ぶとともに叔父に反旗を翻し、叔父の命令で休学していた王都アステリアの魔法学園に復学する――が序盤のあらすじ。

    擬似的な『逆ハーレム』からの『追放ざまあ』と『もう遅い』をうまく掛け合わせたストーリーとなっており、複数の要素を組み合わせることで、他作品の亜流と化するのを防ぐとともに、ミスティアの特待生試験とアリーシャの入学試験を兼ねた精霊同士の決闘シーンを織り込むことにより読み手のカタルシスを与えていることがよく分かる。しかも、本来であればクライマックスとして使えそうな決闘シーンを惜しげも無く中盤に投入し、読み手の後半への期待値を上げており、作者はその期待にしっかりと応えている。

    一方、アリーシャに『FA移籍』した精霊たちが一枚岩であるかと言えばそうではなく、それぞれの温度差をしっかりと描いており、また、なぜ他の精霊をも凌駕する存在であるスキアが貴族令嬢とはいえ、世間的には何もかもを失った小娘となったミスティアと契約したのかという謎を呈示した上でそれをうまく回収している。