俺には二歳下の妹がいる。
外見はまあ普通に可愛いし、実際モテているらしい。
しかし、ウザい。ウザ過ぎる。いつも俺にベッタリだ。今年の春から高校生になるんだから、いい加減、『兄貴離れ』をしてほしい。心からそう思う。
そして今日も今日とて、妹は俺にベッタリ。しかも俺が趣味で書いている漫画について、「お兄ちゃんの漫画、つまらない」、と言い放ちやがった。ウザい。
と、そんな折。母さんが仕事から帰ってきた。
俺はいつも通り母さんから仕事の愚痴を聞かされるのだろう、と。そう思っていた。
しかし、母さんの口から思いも寄らない言葉が。
「秋山さん、こっちに帰って来るんだって」
「は!? あ、秋山が……帰って来る!?」
秋山というのは、俺の幼馴染の女子。まあ幼馴染と言っても、彼女は九歳のときに大阪に引っ越してしまい、それ以来連絡も取っていなかったからその表現が正しいのかは分からん。
分からん、が……嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。
秋山──秋山千紗(あきやまちさ)は、俺の初恋の相手なんだ。
まさかその秋山と、また再開することが出来るだなんて。
「お、おい、母さん! 秋山はいつ、こっちに帰って来るんだ!」
「なーに、アンタ。やけに嬉しそうじゃない。それが急でね、明日だって、明日」
「あ、明日!? なんでもっと早く教えてくれなかったんだよ!」
「知らないわよ、私も今日知ったんだもん」
まさかの展開だった。
もう二度と会えないと思っていた幼馴染と、また会える。会えるんだ。
俺は喜びを顔に出さないよう気をつけながら、それを妹に話した。
コイツも秋山のことを覚えているはず。きっと喜ぶに違いない。
そうに違いない──と。思っていたんだ。
まさかこの後──
「ふーん、帰って来るんだ……あっそ。まあ、いいんじゃない?」
妹が『ヤンデレ化』するとは。
そのときの俺は、予想だにしなかった。
※こちらの作品は『カクヨム』様でも連載しております。
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