「失礼する。私は公爵家嫡男ジャック・エル・ヴァディムだ。
こちらで婚約破棄に関する相談を受付けてくれると聞いてやってきたのだが」
堂々とした言葉の内容に似合わず、相談内容が繊細なだけに、小声でいかにもお忍びといった様子の一人の男性が相談所に訪れた。
「いらっしゃいませ~…あー…はいはい……もう大丈夫ですよ」
「…は?…大丈夫?…その手をぐるぐる回しているのは何のつもりだね?」
「ですからあなたが先程まで婚約破棄を考えるほど夢中になっていた、その女性のことですよ。今は彼女のことをなんとも思わないのでは?」
「…なっ!?…なぜ君がルイズ嬢のことを……あれ……本当だ…」
「単純な魅了の呪文ですね。一応お薬出しておきます。一週間分ありますので毎食後必ず飲んでください。請求書はこちらです」
「…ああ…ありがとう…すまない」
ここは貴族たちの婚約トラブル専門の相談所。
『モーリス婚約破棄・解消専門相談所』です。
今日は皆様に私たちの相談所についてお話します。
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