君に捧げる【英雄録】

 この世界は未知と高揚で満ちている。
 魔法、ギフト、精霊、迷宮、遺跡。
 そして──英雄。
 ──英雄の定義とは何か。
 この世界に自国の王の名は知らなくとも、その質問の答えを知らない人間はいない。
「英雄とは【英雄録】に名と物語を刻まれた者」
 
 ──【英雄録】
 それは、精霊たちが綴る書物。
 それは、未完成である世界最古の書物。
 綴り手である精霊たちは世界中に散らばり、紡ぎ手である人々が残す“偉業”を待っている。
 人々が見せる“魂の証明”を待っている。
 世界を舞台に繰り広げられる英雄譚を待っている。
 そうして精霊たちの手によって【英雄録】の一頁に名前と物語を刻まれた主役たちのことを、人々は英雄と呼ぶのだ。
 英雄の種はどこにでも芽吹く。
 常に精霊たちは新しい英雄の誕生を待っている。
 そして人々は誰しもが【英雄録】に名を連ねることを夢見て、世界という舞台を生きる。
 これは臆病な一人の少年が英雄へと駆け上がってゆくまでの道を記す物語。…続きを読む

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