アパートの部屋を借りたら、天使な女子高生が家で迎えてくれるようになった。俺は、この少女を預かる事になった。

 高校卒業してすぐ就職をした橘新太(たちばな あらた)は、20歳の時に上京した。
 特に理由もなく、軽い気持ちに都会に足を踏み入れ、実家から離れて一人暮らしをする事にした。
「ただいまー」
 一人暮らしをしている新太が玄関を開けても、返ってくる声はない。
 冷たいドアノブの感触が嫌というほど伝わってしまい、灯りが消えている室内がを誰もいないのだと主張しているよう。
「……行ってきます」
 仕事に行く時も、帰る時も、誰も見送ったり迎えたりはしない。
 それが、寂しく思う。その寂しさを、新太は毎日感じてしまっていた。
 ────新太の家は職場から1時間半の距離にあり、通勤時間に悩まされていた。
「そろそろ本腰入れて引っ越さないとなぁ……」
 ある日、自宅からの通勤時間に悩んでいた新太は引越しを考えた。
 前々から考えてはいたのだが、これから引越しシーズンに突入してしまうので、本格的に引っ越そうと思ったのだ。
 ────そして、そう考えたその日。
 新太は仕事付き合いのある家主の家に訪問した。
 その家主は、いつも新太を可愛がってもらっている家主で、職場から近いアパートを所有しており大事な高校生の娘がいる。
「橘さん、どうぞ上がってください!」
 珍しい金髪を靡かせた少女。その容姿は整っており、まるで天使を連想させる。
 新太と家主の娘との関係性は薄い。出会う事も少なく、訪問する度に少し話すような関係。だけど、こうして訪問する度に笑顔で出迎えてくれるのが、新太にとって嬉しい事だった。
 そして、今回の訪問で家主が引っ越す事を知ってしまった新太。
 寂しいと思う気持ちもあったが、1番気になったのは『高校生である娘さんはどうするのか?』という疑問だった。
 だけど────
「ねぇ、橘くん? 確か、橘くんって新しいお部屋探してたわよね?」
「えぇ、そろそろ本格的に探そうと思っています……」
「じゃあ、うちの部屋を借りてくれないかしら? あと、娘も預かってくれたら嬉しいわ」
 そんな一言から始まったお話。
 大人になりきれない男が、天使のような女子高生を預かり、一緒に暮らして小さな幸せを互いに作っていく物語。
「ただいま、柚」
「おかえりなさい、橘さん」
 一人暮らしの寂しさは、天使が迎えてくれた事で消えた。
 新太は、温かさと幸せをもらった。…続きを読む

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