「セレナ、お前と第二王子の婚約は白紙となった」
「お父様、今度は一体なにをしたのですか?」
オセアン公爵が娘のセレナを溺愛しているのは、有名な話だ。
今も、やっと結んだ婚約が白紙になったというのに満面の笑みを浮かべる始末。
怒ったセレナだったが、話を聞くと、父のせいではなく王家からの意向であった。
どうやら、王太子から外れたことを理由に第一王子の婚約者・レジーナが我儘を言い、第一王子と第二王子の婚約を交換するよう根回ししたらしい。
セレナは仕方ないと割り切って、新たに婚約者となった元王太子のロベルトに会いにいった。
はじめて会ったロベルトはベッドに寝たきりで、周囲からも見放されて、がっつり心を病んでいた。
その姿があまりに不憫だったので、連れて帰って癒してさしあげることにしたお話。
レビュー
あらすじ
妻を亡くして独身のオセアン公爵。彼はあまりに娘のセレナを溺愛するあまり、彼女を極力若い男に近付けさせず、数々の縁談も病弱を理由に成立させない徹底ぶり。
そして互いの印象も悪くなかった第二王子・ファウストとの縁談も流れ、公爵家存亡の危機を覚えたセレナ。
過保護な父親の根回しかと怒りを露わにするが、今回ばかりはそうではなかった。
第一王子・ロベルトが落馬による後遺症により事実上廃嫡。
王位継承者が第二王子になりそうな流れになった途端、エストレア公爵家の横槍により第二王子・ファウストとの婚約がエストレア公爵家の令嬢・レジーナによって奪われ、王妃の器ではないと評されたセレナは第一王子・ロベルトを押しつけられる形となってしまう……。
王家の後継者争いとお家騒動をうまく絡ませており、短編でありながら物語にある程度の重厚さを持たせている。また、『公爵令嬢は第一王子と結ばれ、国王夫妻として国を治めることに……』というようなご都合主義的な展開ではなく、それでいて読み手が納得するような展開に持って行っている。