「お姉様、わたくしの替え玉になってくださらない?」
自分とうり二つの双子の妹・リーナの一言に、伯爵令嬢ルイゼ・レコットの人生は壊された。
リーナの替え玉として振る舞ううちに、いつしかリーナは”才女”と褒め称えられ、ルイゼは”無能”と家族や周囲の人間から嘲られるようになる。
そんな日々が続いたある日、ルイゼは婚約者である第二王子・フレッドより一方的に婚約破棄を告げられる。そんなフレッドの隣に寄り添っていたのはリーナだった。
妹によってすべてを奪われたルイゼ。
そんな彼女の前に十年ぶりに現れたのは、”稀代の天才”と謳われる美貌の第一王子・ルキウスだった。
「この家は――君には狭くて窮屈だ。ルイゼにはもっと広い世界が似合う」
これはすべてを奪われた少女の心を、ひとりの青年が少しずつ癒していく物語。
※タイトルの回収までには少し時間がかかります。
レビュー
伯爵令嬢ルイゼ・レコットは、無能と評され、フレッド王子からの婚約破棄を受けます。
しかもその新たな婚約者は、彼女の双子の妹・リーナ。しかし、リーナの評判は、実はルイゼが替え玉となって築いたものでした。
物語は、ルイゼが第一王子・ルキウスとの再会を通じて変化し、多くの謎や陰謀が絡む壮大な物語へと展開していきます。
物語では、ルイゼの言葉が信用されなかった理由や、ルイゼとルキウスの邂逅が一度だけではなかったこと、ハリーソン・フォルの意味不明な言葉など、多くの謎が提示されます。
同時に彼女の自己肯定感の低さと自責の念を混ぜ合わせて安易な逆転劇を避けた物語になっています。
一方でリーナが徐々に悪行のツケを支払わされるさまをうまく小出しにしているのが分かります。
またリーナの復讐から始まると思われた物語が、国家規模の陰謀に発展し、良い意味での裏切りを実現しています。