聖女ルピスは口づけによって、特別な魔法を使うことができる。人に自分の命を捧げる魔法だ。
その貴重な魔法によって、長く王城の箱庭に囚われていた。――が、ある時、箱庭の壁に亀裂を見つけた。そこを覗くと、心優しい王子アーシュがいた。
ルピスはアーシュと壁越しにお喋りをして、壁越しに友達になる。
そしていつしか、壁越しに恋をする。
けれど時間の流れと、王が使う邪悪な魔法に邪魔されてしまって――……。
……すれ違った末に、結局ルピスはアーシュに、命をあげてしまったのだった。
これはその、顛末の話である。
恋心と魔法の口づけに翻弄された聖女の、とても苦しくて、とても幸せな、二十年ちょっとの人生のお話。
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