通称「冷淡」令嬢ですが、ただの小心者ですみません。

「私、フレデリック・ヴァルテーユは、リリバント公爵令嬢、カミーユとの婚約を破棄し、このウアキル男爵令嬢、クラリスと結ばれることをここに宣言する!!」

王家主催のデビュタントで、カミーユが告げられたのは、婚約者である王太子の浮気と婚約破棄の宣言だった。

「はい、では今夜は失礼させていただきます」

カミーユはその言葉をあっさり聞き入れ、会場を後にする。周囲からは「冷淡令嬢」と呼ばれる彼女は、婚約破棄にすら興味を示さないのかと思われたのだが。

(どうしましょう…どうしましょう!私、婚約破棄されてしまったわ!)

内心ではとても焦っていた。婚約破棄によって王太子妃教育費の返金しなければならないのか、それを拒否したらどんな報復が待っているのか。そんな想像をして怯えていたのだ。彼女は冷淡なのではなく、とても小心者なだけだった。

「カミーユ!待ってください!!」

帰ろうとしたカミーユの前に現れたのは、元婚約者の弟のエドワードであった。彼はカミーユの素を知る数少ない人物で────。

気弱な令嬢と、彼女のことを一途に想う元婚約者の弟が育む恋物語。

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