心から愛しております旦那様、私と離婚を致しましょう

著者:蓮見菜乃

「おかえりなさいませ、旦那様」

 深々と頭を下げて出迎える、伯爵夫人らしく美しくも淑やかに着飾ったリヴェーラに、夫であるリアム・リスト・アルカディルは、返答を返すことはなかった。
 彼女の体では維持し続けることが厳しいであろう姿勢のまましばらく放置し、やっと声をかけたかと思えば、彼女にかけられるのは冷たい声音。

「いつまでそうしているつもりだ」

 リヴェーラ・リスト・アルカディル伯爵夫人。彼女は美しく教養もあり、奥ゆかしい妻だったが、夫に愛されることなく、二年という月日がすぎていた。
 それでも夫を愛し、一生治ることの無い奇病と闘いながら伯爵夫人として業務をこなし続けた彼女だったが、ある日を境にその生活さえも崩れることになる。

 帝国に現れた聖女、 ジゼル・ラウメル。

 女神信仰の帝国で聖女が発見されたとなれば国中の男性が求婚に押寄せる。

 リヴェーラの夫も同様だった。

 そして本妻であるにもかかわらず別荘に追いやられたリヴェーラは、夫の邪魔になることだけはと、世界で最も愛する夫との離婚を決意する。

 夫を愛し続けた妻と、妻の愛に気づくことのなかった伯爵の未来はーーー……
 

 

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