煮詰まって、最後まで甘い

著者:有沢真尋

“結婚は済ませておいた”

 簡潔な一文というのは、要領を得た場合のみ有効である。

「なに、お父様。どういうこと!?」

 それだけではさっぱり意味がわからないというのは、用をなさない文章であり、混乱を引き起こすだけ。
 留学先で父であるエドモンド伯爵から急ぎの手紙を受け取ったガブリエラは、目眩とともに叫んだ。
 結婚? 誰の?

(お母様はお元気だから、父の再婚という線は無い。兄様は五年前に結婚している。つまり当家で未婚なのは私だけ。私……、私の結婚を? 父が済ませておくってどういうこと!?)

 ドレスは? キスは? 教会での誓いの言葉は?
 誰かが代わりにすべて済ませておいてくれたと?
 誰と?

「ありがたくないんですけど……!?」

ーー果断、即決、辣腕の実業家である父からの突然の手紙。
気づいたときには、人妻になっていました。

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