俺、斎藤大介という男は現在、この人気のない場所にあるBarで働いている。
なぜこの場所で働いているかについてはもちろん、あの有名な芸能事務所の社長からクビを宣告されてしまったからだ。
当時、あのセリフを聞かされた時は自分でもかなり驚いたことから、多少は抵抗してみたものの、一切聞き入れてもらえず。
しまいには、すぐにゴツい警備の人……大量のSPが部屋の中に来て、追い出されるという始末に至った。
だが、俺はあることに気が付いた。
いや、ここではすぐに頭を切り替えたというべきだろうか。
「あれ。これってもしかして……俺、自由になったということか?」
自分の担当をしていた生意気な女優の相手をしなくて良い。
周りの俳優や上司から睨みつけられることも攻撃されることも無い。
また、毎日の過酷なマネージャー業務のことを考えなくてオーケー。
「え、なにこれ。ちょっと俺にとってご褒美ありすぎな気がするんだが……大丈夫だろうか」
そんなことを思って時間が経った今。
素晴らしいマスターや同僚の人達と出会い、俺は何とも言えない幸せを噛みしめながら日常を過ごせている。
そして、やはり一人暮らし万歳。生涯独身万歳、といったところだ。
「よぉーし! 明日はまったり過ごすぞおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!」
しかしながら、この時の俺は甘く見ていた。
いつから自分はこんな勘違いをするようになったのだろうか。
芸能事務所を辞めて半年後――。
次々と自分の外堀が埋められていくような現実を突きつけられていく。
これは、そんな田舎のBarで働いている俺、二四歳の斎藤大介とその周辺で巻き起こるラブコメディである。
*この作品はカクヨムにも掲載しています。
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