私の姉は人見知りで引きこもりのゲーマーだった。
姉がはまっていたゲームの格闘対戦相手はほとんど私。
姉の影響で、私は少年漫画も少女漫画も
恋愛シミュレーションゲームもたしなむ高校生に成長していた。
そんな私は高校生最後の夏休み中に家族で行った海で溺れてしまったのだ。
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私はラドレス公爵令嬢サリエル・ミューラ
物心ついた時には断片的に体験したことのない記憶があった。
そして成長するうちに確信に変わっていった。
私には前世があった恋愛シミュレーションゲーム
悪役令嬢サリエル・ミューラとして転生した事し私の辿る道は
・爵位剥奪の上追放
・死亡
この二択であることを。
前世の私は若くして死んだのにあんまりだと思わないだろうか。
※修正しながらやってます。
「小説家になろう」でも掲載をはじめました。
レビュー
ラドレス公爵令嬢サリエル・ミューラは六歳を迎えたとき、自分は前世で高三の夏に溺死したこと、現世では生前姉とプレイしたシミュレーションゲームの中の世界でヒロインを虐げる悪役令嬢として転生し、その運命は身分剥奪の上追放あるいは死というバッドエンドを迎えることを理解していた。
そこで、最低でも身分剥奪になったとき、平民として一人で生きていくことができるよう、護身目的という言い訳により武術や剣術を身に付けたり、人並み以上に知識を吸収したりと、貴族令嬢にしては多忙な毎日を送っていた――が序盤のストーリー。
本作はいわゆる『悪役令嬢もの』であり、主人公がバッドエンドを回避するため様々な手を打つというバタフライエフェクトを描くという王道な内容。
また、サリエルを『信頼できない語り手』にすることで、チート要素や『俺TUEEE』を排除しているのが分かる。
そしてサリエルの母・リリアスが実子ではないことを差し引いてもなぜそこまでフランツを嫌うのか、突如として学園を急襲し、魔力を持たない生徒ばかりを拐かしたのはいったい何者なのかという謎を提示させて続きが気になる物語。
本作の何よりの特徴は、基本的にはサリエルの視点で描きながら登場人物それぞれの意図や想い、考えが交錯する群像劇としての要素を持ち合わせており、その見えない力が各々の意図に順じたり、反発したりすることで、黒幕がいるのかどうかすらわからない状況を作り出し、サリエルをうまく翻弄させている。