隠し神は人の娘(こ)を愛する〜あやしき妖神と人間の異類婚姻譚〜

 とある村は日照りによって作物が育たなくなっていた。このままでは餓死者が出てしまい村は終わってしまう。そんな時だ、隣の山に隠し神が現れるという話を聞いた。

 隠し神は若い娘を差し出せば願いを叶えてくれるという。そんな本当かどうかもわからない話を信じるのか。村は藁を持つかむ思いで村の娘を花嫁に出すことにした。それほどまでに危機的な状況だったのだ。

 昨年、両親を亡くし二十歳になった娘のミズキは白無垢姿で山道を歩いていた。彼女は隠し神の花嫁として選ばれたのだ。

 最初はもう少し若い娘だった。隠し神は幼子を好むと言われていたからだ。けれど、両親が反対した。親無しの行き遅れがうちの村にはいるじゃないかと言って。ミズキは確かに両親を亡くしている。そして、結婚どころか相手もいなかった。

 彼女は両親の世話を一人でやっていたこともあり、結婚相手など探す余裕はなかったのだ。村人も面倒な親がいるところの娘など息子の嫁にはしたくなかったというのもある。そんなわけでもう親もいないのだから後腐れもないだろうと花嫁として選ばれた。

 古びた社に一人、残されたミズキは隠し神が現れることを願う。すると、一人の男が現れた。地面につくほどの長い黒髪に赤黒い神主のような衣服を身に纏うその男は、ミズキを見てどうしたのかと問う。ミズキは男に隠し神かと問えば、彼はそう呼ばれているねと答えた。

 事情を話すと隠し神はミズキを観察して、「好みではあるけれど、お前は幼子じゃないねぇ」と言われてしまう。このままでは村を救うことができないとミズキは意を決して、自分を妻にしてくださいと言った。自分しかいないのです、どうか村を救ってくださいと。

 隠し神は妻にしてくれと言われたことに驚き、そして「あぁ、妻ならば」と納得したように頷いた。ワタシ好みの娘だ、妻ならば、連れて帰ろうかね。そう言って笑みを見せると彼はミズキを抱き抱えて妖かしの世界へと連れ帰った。

 これは人間の世界とは違う、妖かしが住まう妖かしの世界で織りなす妖神と人間の異類婚姻譚。

 妖かしの世界という異世界を舞台にした和風恋愛ファンタジー。
妖神という妖怪のような人外と人間が夫婦となり、お互いを愛し合っていくお話になります。

 性的表現(朝チュン)と戦闘描写があります。

レビュー