アスクラピアの子

 始まりは名前も知らない異世界の地だ。そこの薄汚れた下水道で、俺はルンペンのガキ共に抱き着かれた格好で目を覚ました。
 チート? んなもんねえよ。あるのは、朧気な『ディートハルト・ベッカー』とかいうガキの記憶と、そいつにあったアスクラピアの『神官』としての力。俺は生き残る為に、こいつを少しばかり使える力にしなきゃいけない。

 アスクラピアの二本の手。

 一つは癒し、一つは奪う。

 彼の者は永遠に一である。

 多に分かれても一である。永遠に唯一のもの。

 一の中にこそ、多を見出だせ。

 多を一のように感じるがいい。

 そこに始まりと終わりがあるだろう。

 そして――

 風に揺らぐロウソクよ。一思いに死ね!

 母によって作られたものは、皆、死を目指すのだ!

 熱き血よ。お前はもう消え去れ、そしてそれを喜べ。

 死は歓喜であり、全ての困難からの解放である。

 心臓よ。お前の熱き血を天に飛散させよ。

 潔く散れ!

 青ざめた唇の女。本性は蛇。復讐と癒しを司り、自己犠牲を好むしみったれた女神、『アスクラピア』に永遠の祝福(災い)あれ!!

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