「この3つの能力の中なら何が欲しい?」
ネット掲示板でよくある問答、そんな妄想に興じる暇人達。
もしもそれが本物だったら貴方はどうしますか?
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『いつだろうか、自分が物語の主人公ではないことに気付いたのは。僕が中心で周りはモブ。僕がいるから世界が回る』
『そんな事はない。太陽が地球の周りを回っていないことなど、今の世界じゃ自明の理だ。そんな簡単な事を知るのに凡愚な僕は随分と時間をかけた』
水瀬銀次(みなせぎんじ)は祈らない。祈る代わりに殺すことにした。
大学院での彼の研究は心臓をはじめとする「循環器系」全般を人工のものとして再建できる、まさしく画期的なものだった。
多くの人を救い、多くの者が称賛し、世界が彼を「認めてくれる」
……はずだった。
あっけなく奪われた彼の研究。挙句盗んだのは「彼」が「教授」からということで大学から除籍。親からも見放され、明日食うのにも困ったあたりで下らないスレを見つけた。
「この三つの能力の中ならどれが欲しい?」
下らなかった。
でも下らないことに使える時間は今、嫌になるほどある。
「僕は液化金属かな」
────これは降って湧いた超能力を武器に異能力バトルで無双する話……ではない。
強大な力を手に入れた者が、果たして「人間らしくあり続けられるのか」
これは「人間」の物語
レビュー