◆完結◆『後悔してる』って、ご勝手にどうぞ! あなたがいなくて、こちらは幸せですから【短編版】

著者:瑞貴

 王城の夜会。婚約者ルーカスからの、突然の婚約破棄。
「アリアナ侯爵令嬢。君との婚約を破棄する。金輪際、僕とシャロンに関らないでくれ」
 彼に腕を回しているのは、幼馴染で親友の男爵令嬢のシャロン。

「お前の傍若無人な態度に、うんざりだ。また、シャロンを虐めていたのだろう」
 アリアナを責める婚約者。

「虐めて……、なんていないわ」
「嘘を吐くな。シャロンのことを、また、平気で突き飛ばしていただろう。僕が何度注意しても止めないその行動。お前への気持ちは、もう何年も昔に冷めていた。いい加減気付いたらどうだ」
「だから、それは2人を守るためなの、何度言ったら分かってくれるのよ」

 アリアナは、何故か危機が起きる前に、その映像が頭の中に流れてくる。
 これまで危機を察知しては、彼ら2人を助けてきたのだ。
 それを2人へ何度説明しても信じて貰えない。

「お前の戯言にはついていけない。2度と、その適当な言動を僕たちに聞かせるな」
「うふふっ。ルーカスは明日、あたしと海に行くのよ。ね~、ルーカス」

 この会話中も、危機を知らせる映像が、アリアナの頭の中に流れる。

 ……ルーカス様が階段から落ちる。
 それを防ごうと、彼を庇ったアリアナは階段の下へ真っ逆さまに落ちる。

 頭を強く打ったアリアナ。そこで思い出したのが、前世の記憶だ。
 会社の経理主任をしていた、伊東湊30歳。
 前世は「甘いマスクの覇者」という乙女ゲームにのめり込んでいた。
 そして今、アリアナとして生きる世界こそが、そのゲームの世界だった。

 アリアナは、ゲームの中の悪役令嬢。
 男爵令嬢のシャロンがヒロインだ。

 これまで度々アリアナの頭に浮かぶ映像は、ゲームのイベントだった。
 本来であれば、シャロンの好感度を上げるために用意されていたものだ。
 それを知らないうちに、アリアナが回避していた。

 王城の階段の落下も、本来はゲームのイベントの一つ。
 
 アリアナが階段から落ち、隠れキャラルートを開いた。

 ブライアン・クロフォード公爵の熱烈な求婚と同時に、元婚約者が復縁を迫ってくる。
 
 ブライアンとデートをした祭りの10日後。
 ゲームでは、国を揺るがす天災が襲うシナリオだ。
 アリアナの予見によって、何とか災難を逃れた。

 だが、元婚約者とシャロンの領地はそうもいかなかった……。

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