ありのままの姿でいるのはお互いの前でだけ。愛を歌う彼は仮面をつけて、令嬢だった私は人を欺くメイクをしていた。だけどだからこそ、私たちはこの世界を素敵だと言えるのだろう。

著者:伊賀海栗

その人は霧の濃い夜、細い路地にいた。
スパンコールのドレスみたいなアイメイクで、リップスティックを一本まるまる使ってしまったかのような濃厚なルージュの唇には細くて長い煙草。

夢にまで見たデビュタント・ボールで。
自分の容姿が劣っていると思い知らされて泣く私に彼は

「とても綺麗よ、エリカ」

もっとも求めていた言葉を贈ってくれた。

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