【短編】虐げられた元魔女令嬢のおかしな契約結婚〜冷淡公爵様が私とお菓子にだけ目がない〜

著者:秋色mai

 この世界では、赤は魔女の象徴として忌み嫌われていた。
 赤髪で生まれ、幽閉生活を送っていた子爵令嬢のエヴィ。しかし、彼女はその赤髪を恨んではいなかった。

「だって本当に前世が魔女だったんだからしょうがないじゃない」

 彼女は五百年前の前世で、本当に魔女だった。とはいえ力があってもポンコツで、趣味はお菓子作りの、子供を庇って死んでしまうようなお人好し。

「もう魔力もないのにどうして赤髪なのかしら……嫌いでは、ないけれど」

 今の彼女の夢は、いつか家から追い出されて前世で住んでいた森に戻り、自由になること。

「ひとりぼっちには、慣れているけれど……やっぱり一人は寂しい、なんてね」

 あわよくば好きなお菓子をいっぱい作って食べたり、好きな人や友達を作って幸せに暮らしたかった。

 そして久々に部屋から出ることを許されたデビュタントの日。
 エヴィは中庭で一人、月を見ながら涙を流し、お菓子を食べている男性を見てしまう。……冷淡公爵と有名なはずでは!?

「一年間、俺に全く好意を抱かなければ、離婚して自由にしてやる」

 秘密を知ってしまったエヴィに公爵が持ちかけたのは……賭けとおかしな契約結婚。

「では、俺に菓子を作るというのも足そう」

 うまいように流されて、エヴィは賭けに乗り、契約してしまう。

「赤髪でもいいんですか?」
「君は嫌いなのか?」
「いえ、好きですけど」
「俺もだ」

 公爵様は少し変わり者なようで……?
 
「うまい」
「最低限度の生活基準くらい知ってくれ」
「怪我があってはいけない」

 想定外に優しい公爵に、エヴィは絆されていく。

『魔女』

 ────公爵は、ずっと“彼女”との再会を夢見ていた。転生、という禁忌を犯すほどに。

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