「さあ、どうぞカトリーヌ様。こちら私手作りのマドレーヌですわ」
「へえ…直接王子に取り入るのではなく、私から篭絡しようとするなんて、イザベラ、あなた、なかなかの策士ね。まあ今回は、そのマドレーヌに免じて許してあげるわ……んぅっ……あっ……おいひぃ……んっ………悪くはないわね………及第点といったところかしら………………その………おかわりはないのかしら？」
「もちろんございますわ、いくらでも召し上がって下さいね」
わずか数十秒で完全に餌付けされている公爵家令嬢カトリーヌ・ド・ジェラン。
愛する婚約者モーリス王子との恋路を邪魔するものはどんな手を使っても排除する自称悪役令嬢。
だが彼女を知るものは、誰一人として悪役令嬢と認識していない。
人はみな、陰ながら彼女のことをこう呼ぶ『ポンコツ令嬢』と…
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