「マーニー、君との婚約を破棄したい。僕は愛する人と幸せになる」
「あ、はい、どうぞ」
婚約者のマイクからの突然の言葉に、私は訳も分からず、ただ返事をしました。
「ああ、わかってくれたか。彼女は、君よりも何倍も美しい人なんだ。彼女と会っていると、君よりも彼女の方がいいという気持ちが、日に日に増していったんだ」
要するに、浮気していたってことですよね。信じられません。愛する人は、私じゃなかったんですね。
私は突然のことで頭が追い付きませんでしたが、彼への気持ちが冷めたことは確かなので、彼のもとを去りました。
*
「と、いうようなことがあったんですよ、お父様」
実家に帰った私は、さっそくお父様に報告しました。温厚な父だから、大抵のことには眉を顰める程度で、決して怒りはしません。
そんな父だから、今回のことも、困ったものだという感じで片づけるのかと思っていましたが……。
「許さん! 許さんぞ、あの若造! うちの娘を悲しませて、ただで済むと思うなよ!」
「あ、あの、お父様?」
私は、かつてないほどお父様が怒っているのを見て、びっくりしました。でも、娘のためにそこまで怒ってくれて、なんだか嬉しい気持ちにもなりました。
「よし、今から奴のところへ行ってくる! ああ、マーニー、君は何も心配しなくていい。お父さんが、奴にきっちりと落とし前をつけさせるから、家で待っていなさい」
「あ、はい」
そして父は、マイクのもとへと向かったのでした。
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