巴琴乃(ともえことの)は、一族を繁栄させるためだけの理由で幼い頃から虐げられてきた。
自死も許されず、ただただすり減り続けていくだけの日々。今日も自分の命ができる限り早く終わることを祈りながら、彼女は死んだように生きる。
唯一心安らげるのは、夢の中だけで逢える美しい人との時間だけ。ただ一つだけ、その時間だけを楽しみに過ごす日々。
そんな中、琴乃の双子の姉である結彌乃(ゆみの)に縁談が舞い込んでくる。
それをきっかけに、琴乃は夢で会ったことのある美しい人に救われることになった。
そこでの生活の中で、人間らしさや生き甲斐、楽しさ、人との関わりの中で生まれる思いに触れていくことになる。
そうして一族繁栄の礎とされた少女は、救(さら)われた先で幸福を知る――
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