幼馴染だった人妻と同棲することになりました。

著者:書峰颯

「急に、ごめん」
「部屋、入れてくれたりしないかな……?」
高校三年生の夏、俺――若草彰人――は幼稚園年少からの幼馴染である彼女――七津星雫――へと告白した。彼女と共に過ごした十五年という月日を信じ、腐れ縁にもなりつつあるこの関係にピリオドを打つために告白するも。
「……ごめん」
たった三文字で玉砕に至る。
あれから九年、俺は㈱ゼクトという管財・警備を主にする会社に務め、二十七歳で課長代理という役職まで頂けるほどに成長を遂げた。
仕事柄深夜帯から始まる現場も多く、俺が会社を出るのは二十一時が当たり前。約一時間の通勤時間と買い物を済ませると、家につくのは二十二時半、朝は七時に家を出て八時半には席に着く。
会社と家の往復だけの生活だったある日。
家のアパートの二階、俺の部屋の前で座り込む彼女と再会する。
「帰るところがない」
そう告げる彼女は昔を懐かしむ発言を繰り返すのだが。
俺はその都度、心の中の傷が抉られる様な気持ちになる。
「両親と喧嘩でもしたの? 帰った方がいいんじゃないか?」
「今は、実家に住んでないんだ……あと、七津星って苗字でも、ない」
苗字が違う。
つまり、彼女は既婚者になっていた。
式にも呼ばれず、連絡も来ず。
それが俺と彼女との温度差なのかなって感じていた。
だけど。
「若草君なら、見せても大丈夫だと思うから」
「雫、お前、その身体……」
彼女には、俺に言えない事情があった。
それが、高校三年生の告白を断った特殊な事情。
今の旦那と別れたいと言い、何もかもが嫌だと泣き叫ぶ彼女。
旦那の名は四神隆三、奇しくも今回俺が取り扱う大型案件のメイン顧客となる人物であった。
「人の嫁を下の名前で呼ぶのは止めて頂きたい」
「要らぬ疑いを掛けられてしまうじゃありませんか。不倫騒動になった場合、ダメージを受けるのは貴方だ、若草課長代理。私は被害者、可愛い家内が旧友であるとある男に盗られてしまった、可哀想な男ですよ」
自分の立場を理解し、圧倒的な資金力と権力を持ってして彼女を支配する男。
俺は友人であり、弁護士でもある――夢桜咲乱――とともに、四神隆三から雫を救い出す決意を胸に抱く。
不倫ではない大人の恋愛、その結末は――
※カクヨムの規定により、ジャンル的には男性目線の恋愛のためラブコメとなります。
 ですが、コメディの要素はほとんどないと思っていてください。
※全てのセルフレイティングは有りになっておりますが、保険の為です。
☆参考資料
ドメスティックバイオレンス – Wikipedia
DV被害に関する各webサイト
離婚弁護士…続きを読む

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