黒き翼の大天使

 創世の女神グロリア・ファル・イーリスはアルティミシア大陸を創り、9人の「主神」を創り出して彼女らに世界をゆだねると姿を隠した。世界を担う主神たちは世界を人と亜人、精霊と妖精で満たし、彼らが狩りて命をつなぐべきものとして野の獣と海に魚をはなつ。
 それから10000年。人は常に覇権を求めて争いあい、闘争は絶えず。
 また西北の、邪神が創った暗黒大陸アムドゥシアスからの侵略者、魔族たちの侵攻もあり、人々は強くカリスマ的な指導者を求める。
 女神イーリス暦8207年、現在の神聖王国ウェルスの将軍シーザリオンは世界の暗雲をぬぐうべくイーリスに拝謁、世界支配者としての力と資格を授かり、はじめて戦背の大陸を統一、ここに神聖ウェルス帝国が始まり、シーザリオン西端の年までさかのぼって帝暦が始まる。
 1800が流れ、大陸には原初の主神の加護を受けた9つの大国と、無数の小国が林立するようになる。大国はすなわち北西・商業の国ヴェスローディア、西方・傭兵の国クーベルシュルト、南西・神聖王国ウェルス、央北・船乗りの国エッダ、中央・騎士道国家ラース・イラ、央南・熱砂と聖仙人の国クールマ・ガルパ、北東・雪深き魔術の国ヘスティア、東方・文治と官僚の国桃華帝国、南東・武毅の国アカツキ(暁天)であり、小国としては草原遊牧国家テンゲリ、精霊(ジン)に護られし島国サリーアなど。
 1800年の間に世界は変容し、魔族の入植もありアルティミシアの生命の種族としての純粋性も失われたが、そのぶん彼らはしたたかになった。歴史に特筆されるべきは641年、女神をだしぬき、力を奪って【驕国】クーベルシュルトの祖となった山賊王ゴリアテ、1578年、剣奴の立場からラース・イラの王になり四方に武威をとどろかせた剣聖王レオニダス、そして1832年、シーザリオン以来の世界統一を果たし、神と魔の世界への干渉を払った創神殺し、または黒き翼の大天使・新羅辰馬と、新羅辰馬死後の世界の基となった新世界の導き手、明染焔。
・・この作品はアルティミシア九国史の一、新羅辰馬の物語。1816年春、彼がアカツキの京師太宰の学生であるところから始まり、あまたの冒険を経て創神と魔神を殺し、世界を神魔の干渉から真に解放して1837年に世を去るまでのお話になります。

レビュー