マナの木を育てよう!

 目を覚ますと、俺の視界に現れたのは見た記憶の無い女の子。

「おはよう。」

 思わず頭をポンポンと触ってしまったが、嫌がる様子もない。
 女の子は部屋の隅にある観葉植物を指さしてマナの木だと言い、育てて欲しいから私の世界に来て欲しいとのこと。
 実家から盗ん・・・持ってきた観葉植物が異世界のモノだとは流石に信じられないが、既に目の前の異変すら理解を超えている。
 俺の家庭環境はとても悪く、一人暮らしをしてからも長く付き合っていた恋人にはフラれ、38歳になってしまった。

「後顧の憂いもないしな。」

 今の生活に魅力は無く、今後の人生も薔薇色になる予定はない。異世界というのは俺がプレイしたビデオゲームのように魔法が存在するようだが、ちゃんと生活できるのか?

 通貨は?

 言語は?

 衣食住は?

 神さま・・・?

 元の世界に戻れないの!?

 それでも俺は行くことにした。何しろゲームのような幻想世界にはそれなりに興味は有ったからだ。行けるのならそれはもう幻想ではない。
 詳しく話を聞けば更に興味は湧く。
 結婚する為に溜めていた貯金を全て引き出し、色々と準備を終えると、いよいよとなった。

「おおおお・・・。」

 辿り着いた異世界は大小幾つもの戦いが続く、予想以上に生きていくのが大変な世界だった―――

レビュー