ヤオヨロズ・シティポップ

「さぁ、無味無臭のクソみてぇな日常をブッ壊しましょう」

 受験生の久美浜 千晃は、志望校への合格とまだ見ぬ恋愛の成就を祈願して、吉田神社で参拝を行った。御利益は予想以上の効果を発揮し、次々と幸運が舞い込むようになる。しかし、ご都合主義なイベントの数々はどれも不自然で、疑心が募るものばかり。

 手放しには喜べない日々の中、千晃の身にちょっとした不幸が訪れる。幸福の反動で「このまま死ぬのかもしれない」と怯えた千晃は、神に縋るために再び吉田神社へと向かう。そこで待ち受けていたのは、『やおよろズ』と名乗る五人組の神様だった。

 やおよろズの目的は、行方不明になってしまった福の神の捜索。報酬として提示されたのは、五つの強力な御利益の付与。利害関係が一致し、やおよろズと行動を共にすることを決めた千晃だったが、神々の御利益は『病気になると効果が反転する』という欠点が隠されていた。

 そして、神々はえらく病弱だった。

 変質者扱いされたり、行きと帰りで同じ犬の糞を踏む日々に辟易しながらも、福の神を捜索する千晃。だが、捜索劇は京都に住む人々を脅かすほどの大厄災へと発展していく――――。

 これは、苦労人のシスコンが幸福と不幸を行き来する非日常の中で何かを見つけ、かけがえのない青春を胸に刻んでいく御利益ラブコメディ。
  

レビュー