春子は偏屈な年寄りの、おでん屋台店主である。
酒は一人2合まで、銘柄は一つ。
冷ならそのまま、燗なら徳利に入れてとことこと温める。
おでんのほかは梅干の入った白ご飯にごま塩をまぶした握り飯と、甘い稲荷。 日によっておでん以外にも日替わりで一品つまみを追加することもある。 4人も座ればいっぱいの木の椅子で、すでに何軒も回って出来上がったサラリーマンが会社の愚痴をこぼすような、ただただ、おでん屋である。
そんなただのおでん屋なのに、いつも立ち寄る稲荷に二度柏手を打つと、知らない世界に行くようになってしまった。
だがしかし何も変わらない。春子はいつでもどこでもおでんを客に食べさせるだけだ。
おでん屋がただただ訪れた客に、あたたかいおでんを食べさせる。
ただそれだけのおでん物語。
※連載開始後改めて引車による移動営業関連の法律を参照しましたが……食まわりの法律に詳しい方はお読みにならないことをお勧め致します。作者が阿呆ですいません!
春子の世界が現代より少し昔か、ファンタジーと割り切れる大人の方だけどうぞお気楽にお進みください。
レビュー