【完結】妹の代わりに血も涙もないと噂の男爵の元へ嫁ぎましたが、何やら旦那様の様子がおかしい

著者:七瀬菜々

 ブランチェット伯爵家はずっと昔から、体の弱い末の娘ベアトリーチェを中心に回っている。 
 両親も使用人も、ベアトリーチェを何よりも優先する。そしてその次は跡取りの兄。中間子のアイシャは両親に気遣われることなく生きてきた。
 もちろん、冷遇されていたわけではない。衣食住に困ることはなかったし、必要な教育も受けさせてもらえた。
 ただずっと、両親の1番にはなれなかったというだけ。

 ---愛されていないわけじゃない。

 アイシャはずっと、自分にそう言い聞かせながら真面目に生きてきた。
 しかし、その願いが届くことはなかった。
 アイシャはある日突然、病弱なベアトリーチェの代わりに、『戦場の悪魔』の異名を持つ男爵の元へ嫁ぐことを命じられたのだ。
 かの男は血も涙もない冷酷な男と噂の人物。
 アイシャだってそんな男の元に嫁ぎたくないのに、両親は『ベアトリーチェがかわいそうだから』という理由だけでこの縁談をアイシャに押し付けてきた。

ーーーああ。やはり私は一番にはなれないのね。

 アイシャはとうとう絶望した。どれだけ願っても、両親の一番は手に入ることなどないのだと、思い知ったから。

 結局、アイシャは傷心のまま辺境へと向かった。
 望まれないし、望まない結婚。アイシャはこのまま、誰かの一番になることもなく一生を終えるのだと思っていたのだが………?

 

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