殿下は殿下の心のままになさってください。

(これ、前世でプレイした乙女ゲームの世界じゃない?) 

 婚約者で王太子のヴァージルとヒロインのカトレアが出会ったその瞬間、マチルダは唐突に前世の記憶を思い出した。

 女性というのはふわふわしたタイプがモテるもの――――『恋愛の参考にするように』と無理やりプレイをさせられた乙女ゲームだったため、マチルダにはヒロインにも王太子にもなんら思い入れはない。ヴァージルとカトレアの仲をアシストすることも、邪魔することもせず、早く婚約を破棄されたいと考えるように。

 そんなマチルダの望み通り、ヴァージルとカトレアは順調に愛を育んでいるように見えた。けれど、次第にゲームとは違った展開を見せはじめる。

 マチルダの興味が己に向いていないことを知ったヴァージルは、なぜかマチルダへのアプローチを開始。カトレアに対してもそっけない態度を取りはじめる。

「マチルダ様は、どうしてわたくしたちの邪魔をしてくださらないのですか?」

 そんな中、カトレアに呼び出されたマチルダは、彼女からそんなことを言われてしまう。
 困り果てた彼女のもとに現れたヴァージルは、思いがけないことを口にして――――?

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