花壇の悪役令嬢様

「そんな木の根元で、何をしてますの?」

 僕には好きな子がいた。身分違いで、高嶺の花で、僕とは住む世界が違う侯爵令嬢様。クルクルと癖のある金髪と、雲一つ無い秋空を思わせる瞳が綺麗だった。

 彼女は誰にでも厳しかった。

『遅刻ですよ!休み時間もまともに守れないの!?』

『身分を理由に虐げるなんて、貴方それでもここの学生ですの!?恥を知りなさい!』

『才能を言い訳にして勉強をサボる位なら、平民に堕して肉体労働に精を出すことね』

 服装が乱れていれば厳しく正し、言動の乱れを許さず、貴族としての正しい振る舞いと能力を強要する人だった。

「土だって学園の所有物よ。花を植えたいなら、そっちの花壇か、寮の自室でやりなさいな」

 厳しい物言いと、反論を許さない上級貴族令嬢の正論に、誰もが嫌悪感を抱いてきた。

 でも、僕はその子の真っ直ぐさが好きだった。

 正しいことを正しいと言って、間違いを直そうと躍起になる。そんな彼女の虜だった。

「弔っているんです」

 関心を持ってもらえたことが嬉しくて、賢くもないのに、つい遠回しな言葉を選んでしまう。

「何を?」

 こうやって少しでも、会話を続けていたいから。

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