「私がイジメだと感じたらイジメなんです!」と男爵令嬢

著者:間咲正樹

「セルマ、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」
「「「――!!」」」

 貴族学園の教室に入った途端浴びせられた、私の婚約者であり、我が国の王太子殿下でもあらせられるロバート殿下からの台詞に、私は思わず言葉を失った。

「あ、朝からタチの悪いご冗談はおやめください殿下。みなさん困惑されているではありませんか」

 突如始まった王族の婚約破棄劇に、クラスメイトたちからの視線が集中する。
 皆一様に畏怖と好奇が入り混じったような表情で、事の成り行きを見守っている。

「もちろん冗談などではないさ。君にはつくづく失望したぞセルマ。君がイジメをするような、最低な人間だったとはな! 君のような人間は、僕の婚約者に相応しくない!」
「イ、イジメ……!?」

 まったく身に覚えのないワードが出てきて、一瞬意味が理解できなかった。

「しらばっくれても無駄だぞ! 僕がこの目で、何度もその現場を見ているのだからな! そうだよな、ララ!?」
「は、はい……」

 ロバート殿下に呼び掛けられ殿下の隣に立ったのは、男爵令嬢のララさんだった。
 ララさん……!?

「わ、私がララさんのことをイジメていたとでも仰るのですか!?」
「その通りだとも。――昨日も掃除の時間、君がララに罵声を浴びせているのを、僕はしっかりと目撃していたぞ!」
「ば、罵声って……! あれはいつも掃除の時間になると、ララさんがトイレに行って掃除をサボっているので、それを注意しただけです!」
「だーかーら! それがイジメだと言っているんだよ僕は! 君は軽く注意しただけのつもりかもしれないが、それで心に深い傷を負ったララは、放課後僕の胸で小一時間泣き続けていたんだぞ!」

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