スローライフにさよならを

私は異世界からの転生者達が嫌いだった。

彼らは前世の記憶とやらを武器に、今までの世界には無かった発明や発想をもたらしてくる。

彼らは身分を問わず現れ、時に身分を気にせず振る舞い、時に貴族の見本とも言える完璧さを持って、私達の世界の様々な隙間に現れてきた。

突如見たことも無いような変わったアイテムと共に現れることもあれば、これまで私達と同じように暮らしていた人が急に前世の記憶を蘇らせることもあった。記憶だけを引き継ぎ自分を保てる者もいれば、急に性格が変わる者もいた。

だが私は、頼んでもいない異文化知識で強引に文明を発展させてくる彼らのことが嫌いだった。営々と積み上げてきた歴史を顧みず、これから紡ぐはずだった文明の階段を何段も飛び越えては皆を強引に引っ張り上げていく、彼らのことが嫌いだった。

特に、この世界に生まれ落ちてから地道に人生を紡いできた人達の人格を上書きするタイプの転生者は、私にとっては最悪と言えた。かつて勇者の力を秘めた童女に取り付き、王都で暴れまわった魔王に並ぶ嫌悪の対象だった。

何故なら、私は初恋の人を、その魔王に等しい存在によって消されたからだ。

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