ちょろいん

「ごめん、他の子と付き合う事になったから……」

まただ。
用件だけ告げて立ち去っていく男子。
別に涙を流したり、泣き叫んだりする感情は無かった。
ただ「この人ではなかった」という失望感だけ。
スマホを取り出して彼の連絡先を消すと次の待ち合わせ場所に行く。

「好きです、付き合ってください!」

振られた後に告白を受ける。
よくある事だ。
そして「好きです!」の一言に私の心は揺らぐ。
しかし慎重にいかないと……。

「友達からじゃだめ?」
「それでもいい!」

男子は喜んでいる。
そんな男子の姿を見ているだけで、私の心は上書きされていた。

「じゃあ、連絡先交換しよ?」

スマホを取り出しながらそう言うと、男子もスマホを取り出す。
恋の終わりは新しい恋の始まりと誰かが言っていたそうだ。
そして私は中学生の頃からこんなやりとりを何千回も繰り返していた。
告白されていない男子を数えた方が早いくらい。
見た目は天音に似て、良い方だと思う。
だから私に告白するのは難易度が高いらしい。
だけど実際は些細な事で簡単に惚れてしまう。
俗にいう「ちょろいん」というやつだ。
別れと出会いの春。
そんな春に私の物語は始まった。

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