フィオリトゥーラ

これは内緒のお話ですわよ。
わたくしはこの世界が実は小説の中の世界とそっくりだという事を知っておりますの。
そうしてわたくしはその小説の中では悪役令嬢と言う役回り。
けれども、好き好んで破滅を待つなんてするわけがございませんでしょう?
ですからわたくしはきめましたのよ。
物語を抜け出せないのなら、壊してしまえばいい、ってね。
手始めに、ヒロインである異母妹のお相手であるわたくしの婚約者との婚約破棄をいたしましょうか。
婚約破棄をした後は、わたくしはとある方と婚約をしたいと思っておりますの。
それは、学園の講師をなさっているシグリット先生。
見込みはありますのよ、だってあの方はいつだってわたくしの事を熱い目で見てきますもの。
ふふふ、大丈夫、わたくしはこれでも次期女大公となるべく教育を受けた女ですわ。
それにしても、第三王子であるわたくしの婚約者の浮気が原因とはいえ、政略結婚を破棄するのは意外と大変ですね。
けれども、その間に存分にわなを仕掛けて狙った獲物を手に入れることが出来ましたわ。
でもなんだかおかしいのです。
わたくしが罠にかけたはずですのに、なんだかわたくしの方がシグリット先生を好きになってしまったようなのです。
おかしいですわよね。
これでは木乃伊取りが木乃伊になったようではございませんか。
けれども、わたくしの事を愛していると仰ってくださるシグリット先生の事をどうしても悪く思えませんし、これはこれでいいと思うわたくしが居りますのよ。
学園を卒業して、わたくしの十八歳の誕生日、その日にわたくしはシグリット先生と結婚をいたします。
ええ、そうなんですの。これはもう決定事項ですわ。
わたくしとシグリット先生との間で咲き誇る花の香りをどうぞお楽しみくださいませね。

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