乙女ゲーの悪役令嬢に転生したけど、夢の中だと思ってるから好き勝手やる富永百合子(29)

著者:間咲正樹

「エスメラルダ、ただ今をもって、君との婚約を破棄する!」
「…………は?」

 あまりにも仕事が忙しく9徹の真っ最中だった私は、オフィスで倒れてしまった。
 が、気が付くと私の目の前には、妙にキラキラした金髪のイケメンが、ドヤ顔で立っていた。
 こ、こいつは……!
 辺りを見渡すと、これまたキラキラした貴族風の男女に囲まれたキラキラ空間。
 そして頭に伸し掛かる、ズッシリとした重み。
 ふと触れると、そこにはケバブかよってくらいぶっとい、金髪縦ロールが。
 ――間違いない。
 ここは私がやり込んでいた乙女ゲー、『あなたに捧げる悠久の唄』――通称『あな悠』の世界だわ!
 私はあな悠の悪役令嬢である、エスメラルダになっているらしい。

 ――なるほど、さてはこれは夢ね!

 流石に9徹が響いた私は、遂に寝落ちしてしまったに違いないわ。
 ううむ、寄る年波には勝てないものね。

「オイ! 何とか言ったらどうなんだ、エスメラルダ!?」
「え? ああ、はいはい」

 エスメラルダの婚約者である、王太子のヘルマンがギャンギャン喚いている。
 ヘルマンは所謂メイン攻略対象キャラなので顔はいいのだが、如何せん性格がガキすぎて私の好みじゃないんだよなー。
 ――まあいいや。
 ここが夢の中なら、またとないチャンス。
 仕事で溜まった鬱憤を、存分に晴らさせてもらおうじゃないの!

「覚悟しろよエスメラルダ! 僕は絶対に貴様を――」
「セーーーイ!!!」
「ぶべらっ!?」

 私はヘルマンの頬に、渾身のビンタを喰らわせてやった。

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