「ねぇ、刑事さん。私、今とても良い気分なんです。
だからね、これからどんな判決が出ようと控訴する気はないんですよ。例え死刑でも笑って受け入れます」
曽根由香里は上気した桃色の頬に手を当て、まるでどこかのカフェで、気の知れた友人にプロポーズの報告をするように嬉しそうに微笑んだ。
「まあ…被害者は亡くなった訳じゃないので死刑までは…重い傷害罪の場合でも15年以下の懲役か50万円以下の罰金ですから」
私が取り調べ室のテーブルに乗る資料をパラパラとめくりながらそう答えると「そうなんですよね…ちょっと残念です」と、曽根は肩をすくめて、まるで死刑を望んでいるように言った。
二度も好きな人を奪われて復讐を決意し、実行するまで。
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