「それって、保険金殺人の話ですか?」と彼女は言った

著者:紀伊章

「そうだ、聞いてくれよ。うちの嫁さん、最低なんだ。生まれたのが双子だからって、全然家事をしなくなったんだよ。部屋の隅に埃溜まってるし、食事は総菜。今着てるこのシャツなんかもさ、俺がクリーニング出したんだぜ。やってらんないよ」
 混んだ社食で相席になった営業主任が、愚痴っている。その妻は、今は休んでいるが、頼りにしていた先輩だ。先輩からは、ワンオペ家事と育児で倒れそうという話をされている。どうしよう、と思った時、「それって、保険金殺人の話ですか?」場違いなほど明るい声が聞こえた。

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