「お客様! お客様の中に、悪役令嬢はいらっしゃいませんか!?」

著者:間咲正樹

「お客様! お客様の中に、悪役令嬢はいらっしゃいませんか!?」
「――!」

 仕事でニャッポリート王国に向かう飛行機の中。
 顔面蒼白になったCA(キャビンアテンダント)さんが、そう呼び掛けてきた。
 何かあったのかしら?
 正直、仕事以外で悪役令嬢をやるのはあまり気が進まないのだけれど、義を見てせざるは勇無きなりとも言うしね。

「はい。私は悪役令嬢ですが」

 手を上げてCAさんの前に立つ。

「ああ、助かります! 実はファーストクラスのお客様が、今にも婚約破棄を始めそうな雰囲気でして……」
「婚約破棄を!?」

 そんな……!
 こんな機内で……!
 やれやれ、どこの世界にも、非常識な人間というのはいるものね。

「わかりました、私に任せてください。現場に案内していただけますか?」
「はい! こちらです」

 私は手袋をキュッとはめ、CAさんの後に続いた。

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