『聖女の妹』という立場を利用して贅沢三昧している私の妹

著者:間咲正樹

「……ふぅ」

 今日も聖女としての仕事で疲労困憊の私。
 軽く伸びをしてから自宅の扉を開けた、その時だった。

「あっ、聖女様が帰って来た!」
「わぁ、凄い! 本物の聖女様だー!」
「っ!?」

 妹のドリスと同年代くらいの、二十歳前後の二人の女の子が、私のところへ駆け寄って来た。
 だ、誰、この子たち!?

「やっほー。おかえり、お姉ちゃん」
「――! ……ドリス」

 テーブルに頬杖をついているドリスが、プラプラと手を振ってきた。

「えーと、あなたたちは、ドリスのお友達かしら?」
「はい! 今日酒場で知り合ったんですけど、聖女様の妹だって言うから絶対噓だと思ったら、マジだったんで、マジビビッてます!」
「ねー! 普通そんなの噓だと思うよねー!」
「オイオイ、フザケんなよお前らー。さっき奢ってやった酒代、徴収すっぞ」
「アハハ、ゴメンゴメンー!」

 テーブルの上には夥しい数の酒瓶と、いかにも高そうなツマミが広がっていた。
 またこの子は……!
 私が仕事で汗水垂らしている間、昼間から酒場で飲んだくれた挙句、初対面の女の子を連れて自宅で優雅に二次会とは……!
 しかもその酒代は、私が仕事で稼いだものである。
 私が聖女になって間もない頃、家計が潤った途端、ドリスは仕事を辞めてしまった。
 それ以来今日までずっと無職で、私のお金を使って贅沢三昧の日々を送っている。
 流行り病で両親を亡くした私にとって、今やドリスはたった一人の肉親。
 ついつい甘やかしてしまっていたのが、完全に裏目に出た。
 仕事が忙しくて、なかなかドリスと向き合う時間が取れなかったというのもあるけど、そろそろキツく言わないと……!

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